#6 Calling you が聴こえる


Oct.05 _2

バーストー(Barstow)を出発したのは昼過ぎに。
通り過ぎるだけでは何だかもったいない街だった。帰りはフリーウェイを降りて街を探索してみたいな。
ここからはフリーウェイ(I-40)を使わずにルート66を東へ進む。
直線だけど波打つ道路。アスファルトはひび割れて、まるで古いジェットコースターみたいだ。
この旅で初めて道路にペイントされたロードサイン「ROUTE66」を見つけた。
数マイル先まで見渡せるストレート。ファインダーを覗けば圧縮効果の効いた木電柱が大気の揺らぎに身を任せている。
並走するBNSFにも挨拶しよう。Google Earthで見つけた3km超編成の列車はこの少し先だったな。
憧れの道をドライブする。ワクワクが止まらない。僕の中の少年が目を覚ましたようだ。

ところで今夜の宿は州境の街ニードルズ(Needles)のモーテル。
バーストーから旧道でも160マイル程なので普通なら余裕があるところなんだけど、ルート66はこのカリフォルニア区間が好きなんだよね。だからいくら時間があっても足りないことはわかってる。
なんと言えばいいか、道も風景も錆(寂)びているんだよ。
アリゾナのルート66は寂びてはいても人(の温もり)を感じる。もちろんそんな旧道も好きだけど、モハビ砂漠のこの道は人を寄せ付けないクールさがある。
喩えが悪いかもしれないけど、捨てられた犬が野良になって人間を見つめているような、何か「哀」を感じる。それを画になると言えばいいのか、とにかく僕にとって此処は琴線に触れる場所。
写真でその雰囲気が少しでも伝わればうれしいな。


送る相手のいない電柱    Chambless  2010



待ち続ける箱  Ludlow  2010


記憶色の宿屋    Newberry Springs  2011


バーストーから8マイルも行けば最初の集落ダゲット(Daggett)。凄いな想像以上に寂びている。
さらに10マイル。フリーウェイ(I-40)の高架下をくぐれば、そこはニューベリースプリングス (Newberry Springs) 貸し馬屋に飼料商店、酒場、銀行、往きつくところの監獄まであるという地域ぐるみの自虐ネタが、ちょっと痛くて笑えない。

80年代にこの街のカフェダイナーを舞台にした映画があった。タイトルを「Bagdad Café」(Out of Rosenheim)という独米合作映画だ。
ふたりの主人公を暗示するカラカラの砂漠に給水塔。潤いの主人公は砂漠と同化する人々の心を少しずつ湿らす。人は人によって変わる。そんな内容の映画だ。

このカフェダイナー(Gas & Motel)は映画のセットではなく実際に営業している「Sidewinder Cafe」という店だった。
撮影後は実際に「Sidewinder Cafe」から「Bagdad Café」に名前を変え現在まで営業を続けている。
バグダッドという地名はここから旧道を50マイルほど進んだかつての鉄道の街。現在その痕跡はほとんどない。
その街に実在した「Bagdad Café」がモデルになったと昔読んだことがある。
ちなみに劇中では撮影地のニューベリースプリングスをバグダッドと呼んでいる。

店の中にはたくさんのネームカードやチームステッカーが貼られていた。
ROUTE66は世界中のハーレー乗り憧れの道でもある。敷地内をハーレーで埋め尽くすこともあるそうだ。

また店の人によると、この辺にはピスタチオの木がたくさんあるらしい。
店の裏では収穫したばかりの大量のピスタチオを干していた。生でも食べれるから食べてみろというので3つ食べたけど、美味かったかどうかはここでは書かないことにしよう。

ところでこの映画に出てくる給水塔はずっと昔に壊れて無くなったと言われていた。
強い風に吹き飛ばされて壊れたのは事実らしいけど、少し離れたところに架台とタンクが分離した状態で置いてあるのを見つけた。
場所は店の北約200m、I-40からは南に80mぐらい。現在はフリーウェイに向けての広告塔として利用されているようだ。




さっきから時折強い風が吹くようになった。
この場所で虹が見れたのは良かったけど、その後ろ北東方向(ラスベガス方面)には真っ黒い雲が湧いてきている。

架台塔の上から望むモハビ国立保護区とインターステート 40

雲から地上にかけて煙のように見えているのは雨か?あの下はハンパじゃない雨だな。
ニューベリースプリングスはここまでにしよう。
バグダッドカフェからルート66を走る車は西も東もほぼすべてすぐ近くの入り口からフリーウェイ(I-40)に乗ってしまう。
だからその先のルート66は貸し切り状態だ。程良く荒れた路面。時折現れるペイントサイン「ROUTE66」もいい感じで
ひび割れている。
わざとらしくない素顔のマザーロードを感じたこの区間は、荒れた天候も含めて気に入った。

黒い雲は南にどんどん勢力を伸ばしている。このままだとアンボーイ(Amboy)辺りでヤバそうだな。

Ludlowの手前8マイルで

でもちょっとワクワクする。




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